2018年11月24日土曜日

【田?あさひインタビュー 3】リリースがない、曲の生みの苦しみ…悩みもあるけど一度原点に立ち返って

二人組音楽ユニット・Bitter & Sweetの田﨑あさひさんが、23歳の誕生日である11月20日にバースデーライブ『Bitter & Sweet ASAHI TASAKI Birthday Live 2018 ~ハロー~』を開催する。今回のインタビューでは主に23歳に向けての思いを語った。

22歳の1年間を振り返った「インタビュー2」はこちら

--22歳もあと1ヶ月を切りましたが、22歳のうちにやっておきたいことはありますか?

「22歳の一年を過ごしていろんなことが変わってきているし、そのときは自覚がなくても、5年後10年後、あのときが変わり目だったのかなと思える年になって……。23歳になるという自覚はあるんですけど、23歳になるから何かを始めようということもあまりなくて、今まではあと何日で年を重ねるから急いで何かをしようということもあって、それに押しつぶされていたんですけど、今年はそういう焦りもありません」

--昨年よりも余裕を感じますね。

「そうですね。自分でもそういう人になりたいなと思っていましたから」

--昨年はリリースがないということに焦りをすごく感じていて、1stシングルをリリースしてから半年もたっていなかったのに、なんだかとても焦燥感を持っていました。

「そうでしたね。そうだった」

--作る曲も、自分が言いたいことよりも、"リリースできそうな曲"ということにこだわったり。

「言ってました。でも今もその考えは変わらず、リリースできるということは常に意識しながらも、本来自分が作りたいものも作るようになりました。なんかもっと王道の自分ならこう行くんだろうけど、また別の方向にも行きたいなという思いもあって、いろんな方の楽曲を聴いて参考にして、『ああ、やっぱり音楽ってすごいな』と、また改めて実感しています」

--最近新たに刺激を受けた音楽は?

「岡崎体育さんとレキシさん。今年『氣志團万博』に久しぶりに行ったんですけど、特に誰が目的で、ということではなく、『そうだ行こう』と思い立って一人で行ったんですよ。そしたら、出るアーティスト出るアーティストがみんな素晴らしくて!その中でも飛び抜けて心に刺さったのが岡崎体育さんとレキシさん。初めての方も楽しめるライブってこういうことなんだ!というライブでした」

--どういうところに特に感銘を受けました?

「岡崎さんは、自分のパフォーマンス終わりにステージからはけていく前に『一言だけ言わせてください』と。『本来演奏が終わってすぐに立ち去っていくのがカッコいいかもしれないんですけど、自分は言霊ということを信じているから、この言葉を置いて行きたい。2020年までに、さいたまスーパーアリーナでワンマンライブをして満員にしたい』とおっしゃってから立ち去っていかれて。それがすっごくカッコいいなと思って。楽曲のかっこよさとともに自分をプロデュースする考え方に感銘を受けて。今まで私が考えたことがなかったことをたたきつけられた気がして、ありえないくらい衝撃を受けました。それから岡崎さんの曲をずっと聴いています。楽曲の親しみやすさももちろんなんですけど、自分をわかっておられて、『もっと自分には何かある』『何かが出てくるはずだ』というものがすごく伝わってくるんです」

--それもまた、全曲自作曲に挑戦という、11月20日のバースデーライブの方向性にも影響を与えているのかも。今の自分にできること、そして自分の中にある可能性を追求しようとするような。

「ずっとやってみたかったことであるので、その第一歩として挑戦したいと思いました」

--さて、23歳になるからこれをやりたいというのはないという話でしたが。

「そうですね。これからの人生を考えていくと、昨年の後半から今年にかけてやっぱり、いろんな人と接していくという大切さがわかったので、今後も積極的にいろんなところに足を運びたいですし、いろんな方の気持ちも聞きたい。そこにオブラートにつつまれていることがなければなおいいなと思ってて、ありのままの気持ちを聞き出せる環境を作り出せたらなと思います。それが今後自分の土台にもなっていきそうな気がするので、この年にしかできないような出会いを大切にしていきたいなと思っています」

--よりベーシックな人間としての目標、みたいなところに立ち返った気がします。

「以前だと、リリース、リリースということで頭がいっぱいだとか、曲作りに悩んだり、もちろん今もそういう悩みもあるんですけど、一回原点に立ち返って、今築けるものを、今のうちに築いておきたいというのはあります」

--そういうスタンスだからこそ、生まれてくるものもあると思うし、曲のことだけ考えているときって、生みの苦しみにとらわれてしまいがちだと思います。曲のことだけ考えている時期の追い込まれ具合って大変なのかなと察します。

「なんにも考えられなくなったこともありました。やっぱり余裕がなくなってきて、そうなると自分にも他人にもキツくなっちゃって。そういうときに引きこもることが多くて、ずっと家にいて曲を作っていたり。一回それを忘れて公園に行こうとしたときに、今が充実しているなと思うといい言葉が浮かんできたりするので、焦りもわかるけど、余裕を持ってと自分に言い聞かせていますね」

--ベーシックな部分で成長したことで、生みの苦しみにぶつかっても、乗り越える術を身につけたのかな。

「逃げ道はできたのかなと思います」

--つぶされてしまわないような。

「それはありますね。前は一曲作り出したら、途中で止まってしまっても、いや、これを作り上げるまで、次の曲には行かないと思っていたんですけど、今だと一曲作っていて、途中で止まったら、これはいったん置いて別の曲に行こうということもあります。作りかけの曲もいっぱいあるんですけど、それがいつか自分に余裕が出てきたときに続きを書ければ思います」

--作り始めたときはこう考えていたけど、全然違う方向性で着地するということもあるのかも。

「『なんだ、この恥ずかしい曲は!』ということが一晩おいたらあったりするので。特に歌詞は恥ずかしいですね。薄っぺらいなと(笑)」

--「薄っぺらいな」といえば、以前は恋愛の歌詞を作ったときに、よくスタッフさんから「薄っぺらいな」とダメ出しされたという話がありましたが、その後成長したのかな?

「最近は、一回恋愛は置いとこうかなと考えることもあります。それは自分の引き出しが少なすぎたりするので、本を読んでから生まれた曲を大切にしていますね。最近発表した『おにごっこ』とか未発表の曲でも。もちろん恋愛の曲も書き続けてはいるんですけど」

--最近強い言葉遣いの恋愛ソングも作っているという話もありましたが。

「普段の自分とはかけ離れているところがあっても、やっぱり歌の自分も普段の自分も表裏一体なので、同じ自分の一部なのかなと思うと、自分のなかから、こういう言葉が出てくるんだと。歌だから言えるけど、普通に言葉にしたらなかなかだなと思うようなワードも出てきますね」

--人間関係が広がっていく中で、書くきっかけになったのは友達の恋愛の話でも、自分から出た言葉ではありますから。

「そうですね。それを聞いた自分の感情も、『あ、今こういう気持ちなんだ』と思ったりすると」

--そういう出会いって大切だなと思います。

「今はもっと勉強していきたいという思いが高まっています。何曲か作って思ったんですけど、自分のコード進行のくせだったりとか、こういう曲にしたいという理想はあるのにできないという、そういう壁にぶつかったりしているので、音楽面でも勉強していきます」

--ここまでは田﨑さん個人としてのお話を聞いてきましたが、最後にBitter & Sweetとしての目標を。

「まずはずっと言い続けている楽曲のリリースです。なかなか思うようにいかないんですけど、今ちょっとずつレコーディングをしているので、うまく形になったらいいなと思います。そしてBitter & Sweetが自らで作詞作曲している楽曲だけのライブもやっていきたいなと思います。そういうのがあるとビタスイらしさをより見つけていけるんじゃないかなと思います」

--3年くらい前かな。よくライブのMCなどの際に、いつかは恵比寿のリキッドルームでライブをするという目標を掲げていましたね。

「はい。目標は目標としてあるんですけど、今自分ができる、近いところの目標でキャパを埋めるということを積み重ねて、その先にリキッドルームがあるということですね」

--先の目標がリキッドルームというのはまだ生きているんですね?

「はい。Bitter & Sweetは年に何回もライブをしているわけではないので、一つのライブにすごく時間を費やしていますし、私たちの熱量もかけているので、だからこそ、いろんな方に来ていただきたい瞬間ではあります。ここにどれだけの方を呼べるかというのは毎回悩んでいますね。それは単独ライブであってもファンミーティングであっても、とにかく今のBitter & Sweetを知ってもらいたいですね。リリースはしていないですけど、日々動き続けていますから」

--そういえば、ライブの数日前から渋谷の街頭などで自らフライヤーを手で配るようになったのも今年からですね。

「そうですね。チラシの手配りはあまり効果がないということは学問的にも実証されていると聞いたことがあるんですけど、まずはみなさんに知っていただけるように、そして社内の方にも、『あ、Bitter & Sweet、自分から動いてるんだ』ということを知っていただけたらという思いから」

--その成果もあってか2月に行われた渋谷eggmanでのライブが……、

「ありがたいことにソールドアウトになりまして」

--やっぱり成果はありましたよね。

「あ、今年始めたことといえば、ツイッターもありました。今後はインスタグラムも併せて、SNSをもっとうまく使っていきたいですね。手軽なうえに効果的なプロモーションができるので」

--チラシ配りのような根性的な活動と、効率的なSNSの両輪でやっていくといいのかも。意気込みも伝えつつ、効率的なプロモーションも図れて。

「そうですね。自分プロデュースって難しいなと思っていて、すべてをプロデュースできるわけではないんですけど、SNSもうまく使って」

--それにしても楽しそうですね。昨年はもっと切羽詰まった感があったような。

「本当に焦っていましたから。どうしよう、どうしようという感じでした」

--リリースのことなど冷静に考えると追い詰められる部分もあるかもしれないけど、その環境すら余裕をもって見るような。

「そうですね、焦っても何も始まらない。多分、今年いろんな方に出会ったり、話したりして、そういう面は大きかったなと思います。自分から外に出ていってよかったなと思います」

--そういう意味では成長できた一年になった?

「自分の中では大きい一年でした!」

--それが20日のライブでも滲みでるものがあるかもしれないですね。楽しみにしています。

(インタビュー・終)

田﨑さんのバースデーライブ『Bitter & Sweet ASAHI TASAKI Birthday Live 2018 ~ハロー~』は20日、恵比寿天窓.swithで開催(19時開演)。

〈プロフィール〉
田﨑あさひ●1995年11月20日生まれ、長崎県出身。2012年『第2回FOREST AWARD NEW FACEオーディション』でグランプリを受賞したことをきっかけに2013年にソロデビュー。
2013年に長谷川萌美と二人でBitter & Sweetを結成し、2014年にインディーズデビュー。2017年5月に『幸せになりたい。/写真には残らないシュート』でメジャーデビュー。

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